「英語と中国語は似ている」と話す人がいます。
それは基本文型が似ていることに由来していると思います。
今回の記事では、より具体的に、文法上の様々な面から「英語」と「中国語」の違いを徹底解説します。
【基本文型】第一文型~第五文型まで並び方は似ている
基本文型の順序は英語と中国語は似ています。
たとえば、「私は日本人です」という第2文型:SVC と
「私は昼ご飯を食べる」という第3文型:SVOの文章で考えてみましょう。
S(主語) | V(述語) | C(補語) | |
---|---|---|---|
日本語 | 私は | です | 日本人 |
英語 | I | am | Japanese. |
中国語 | 我 | 是 | 日本人。 |
S(主語) | V(述語) | O(目的語) | |
---|---|---|---|
日本語 | 私は | 食べる | 昼ごはんを |
英語 | I | eat | lunch. |
中国語 | 我 | 吃 | 午饭。 |
日本語の場合は「SCV」「SOV」の順ですが、英語と中国語は「SVC」「SVO」の順で表現します。
ただし、英語と中国語が似ているのは簡単な文章構造だけです。
「いつ」「どこで」「どのように」のような説明する言葉が入ると順序・位置は違ってきます。
たとえば、「私は去年上海で小籠包を食べた。」という文章で見てみましょう。
S(主語) | V(述語) | O(目的語) | 場所(どこで) | 時刻(いつ) |
---|---|---|---|---|
私は | 食べた | 小籠包を | 上海で | 去年 |
I | ate | Xiaolongbao | in Shanghai | last year. |
S(主語) | 時刻(いつ) | 場所(どこで) | V(述語) | O(目的語) |
---|---|---|---|---|
私は | 去年 | 上海で | 食べた | 小籠包を |
我 | 去年 | 在上海 | 吃过 | 小笼包。 |
「いつ」という日時を表す表現は英語も中国語も文頭に持ってくることも可能ですが、
基本的には、英語の場合は文末、中国語の場合は主語と述語動詞の間になります。
「どこで」という場所を表す表現は、
英語の場合は目的語の後ろですが、中国語の場合は述語-目的語の前になります。
英語と中国語の基本文型の違いは、「中国語の基本文型は、英語に似ているのか?」書いています。
より詳しく知りたい方は、是非、見てください。
【数字】英語は基数と序数がある
数字の表し方は、英語、中国語、日本語で少し違いがあります。
まず、中国語は日本語と同様に、アラビア数字と漢数字を使います。
英語では、(当然ですが)漢数字は使いません。
また、英語には基数、序数という考え方があります。
数量の表現する場合(基数)は、「one, two, three, …」と表現しますが、
順番を表現する際(序数)は、「first, second, third, …」と表現します。
英語では基数と序数は必ず違う表現をする必要があります。
日本語、中国語は、基数であっても序数であっても、基本的には「1、2、3、…」で表現して問題ありません。
序数の場合、「第一、第二、第三、」と「第」をつけて表現することもできますが、英語のような絶対的なルールではありません。
中国語の「2」の表現は2パターン:”二” と “两”
中国語の場合、「2」の表現が2パターンあります。
基本的には、序数か基数かで分けて使います。
この”二” と “两”の使い方だけは中国語は英語に少しだけ似ています。
(※厳密には異なる部分もあります。)
二 | 序数 | 順番を表す場合 |
两 | 基数 | 数量を表す場合 |
中国語の数字の表現方法の違いや”二” と “两” の使い方については、「中国語の数字:”二”と”两”の違いを図解で解説」でより詳しく書いています。
是非、見てください。
【人称代名詞】英語は格変化があるが、中国語には格変化がない
英語で「私」を表現する場合、「私は」「私の」「私に」「私のもの」でそれぞれ「I」「my」「me」「mine」と違う単語を使う必要があります。
中国語の場合は、「私」は「我」で表します。
日本語の場合は、英語のような格変化はないという点では中国語に似ています。
ただし、日本語の場合は、1人称「私」の言い方には「ぼく」「おれ」「自分」など様々な言い方があります。
2人称「あなた」の場合も「きみ」「おまえ」など多くの表現があります。
一つの人称で数多くの言い方があるのは、英語にも中国語にもない、日本語の独特な点です。
英語と中国語の人称代名詞の違いは、「中国語の人称代名詞は、英語より簡単!」に詳しく書いています。
兄弟や姉妹など、家族の言い方
家族の表現方法も「英語」「日本語」「中国語」でそれぞれ違いがあります。
兄弟の場合、英語は兄でも弟でも「brother」と言います。
中国語の場合は、兄は「哥哥」、弟は「弟弟」と使い分けます。
この点は日本語に似ているといえます。
ただし中国語は日本語よりも家族の表現の仕方が複雑に分けられています。
たとえば、おじいちゃんを表すとき、英語では「grandfather」と言います。
中国語の場合は、話し言葉、書き言葉、父方の祖父、母方の祖父でそれぞれ言い方が異なるのです。
話し言葉 | 書き言葉 | |
父方の祖父 | 祖父 | 爷爷 |
母方の祖父 | 外祖父 | 外公 |
家族の表現方法について興味のある方は、「「英語」と「中国語」の家族・親戚の言い方の違いまとめ」に詳しく書きましたので読んでみてください。
【複数形】中国語には名詞の単数形・複数形の区別はない
英語は複数のものを表す場合、語尾に「-s」をつける必要があります。
しかも必ず「-s」というわけではなく、
・s, x, z, ch, shで終わる名詞は -es
・子音の後 yで終わる名詞は y を取り-ies
・不規則な変化をする名詞
など複雑に変化します。
単数形 | 複数形 | |
---|---|---|
規則変化する名詞 | apple | apples |
book | books | |
dog | dogs | |
s, x, z, ch, shで終わる名詞 ⇒-es |
bus | buses |
box | boxes | |
子音の後 yで終わる名詞 ⇒y を取り-ies |
city | cities |
baby | babies | |
不規則な変化をする名詞 | man | men |
child | children | |
変化しない名詞 | fish | fish |
中国語の場合、単数形と複数形の区別はありません。
たとえば「リンゴ」は単数でも複数でも「苹果」で変わりません。
日本語 | 中国語 | 英語 | |
---|---|---|---|
単数形 | 1つのリンゴ | 1个苹果 | an apple |
複数形 | 3つのリンゴ | 3个苹果 | three apples |
ただし、中国語には「~たち」のように複数の人を表現する「们」という言葉はあります。
日本語 | 中国語 |
---|---|
私たち | 我们 |
あなたたち | 你们 |
彼ら | 他们 |
学生たち | 学生们 |
子どもたち | 孩子们 |
中国語で複数のものを表す「们(-たち)」の使い方
「们(-たち)」の使い方は英語とも日本語とも違うため注意する必要があります。
「们」が使えないパターン
数量詞(三个など)が名詞の前につく場合:
三个学生都来了。=3人の学生は皆やって来た.
多数を意味する語句(都など)が文中にある場合:
他们都是学生。=彼らは皆学生である.
「们」が使えるパターン
「好些」「许多」などの形容詞がつく場合:
好些学生们=多くの学生たち.
数量詞も多数を意味する語句もない場合:
生徒は英語の先生が好きです。
学生们喜欢英语老师。
【冠詞】英語は定冠詞/不定冠詞を分けるが、中国語には冠詞自体がない
英語は、冠詞を区別する必要があります。
特定のものを表すのか、不特定のものを表すのかで、定冠詞(the)、不定冠詞(a, an)を分けて使う必要があります。
日本語は冠詞という概念がありません。
中国語も日本語と同様に冠詞は必要ありません。
日本語 | 英語 | 中国語 | |
---|---|---|---|
定冠詞 | (その)リンゴ | the apple | (那个)苹果 |
不定冠詞 | (1つの)リンゴ | an apple | (1个)苹果 |
【前置詞】英語は名詞の前。日本語は名詞の後。中国語は両方もあり。
前置詞の概念も日本語、英語、中国語で違いがあります。
英語での前置詞は、for(~のために), on(~の上に), in(~の中) などがあり、動作の方向や位置を表します。
目的語(名詞)の前に置かれ、目的語(名詞)との関係を表します。
for you :あなたのために
日本語では目的語(名詞)の後ろに置かれるため後置詞と言われます。
中国語の場合、「介詞」と呼ばれ、基本的には英語と同様に目的語の前に置かれますが、場合によっては後ろに置かれることもあります。
「中国語の前置詞(介詞):英語と用法が似ている点・違う点」については別記事に詳しく記載しています。
是非見てみてください。
【助動詞】英語の助動詞と中国語の能願動詞は似ている
英語の助動詞には、can(できる), must(しなければならない), will(するつもりだ) などがあります。
中国語では、能願動詞と呼ばれるものが助動詞にとても似た役割をします。
中国語の能願動詞は、英語の助動詞と同じように、動詞の前に置かれ、動詞の補助的な意味を添える働きをもちます。
たとえば、「あなたは上海に行かなければならない。」という文章で考えてみましょう。
中国語の「应该」は「しなければならない」(≒英語のmust)の意味ですが、英語と中国語の文型が似ているのが分かるでしょう。
S(主語) | 助動詞(能願動詞) | V(述語) | O(目的語) | |
---|---|---|---|---|
日本語 | あなたは | しなければならない | 行く | 上海に |
英語 | You | must | go to | Shanghai. |
中国語 | 你 | 应该 | 去 | 上海。 |
ただし厳密な使い方やニュアンスは、英語と中国語で違う部分も多いです。
詳しくは、「英語と中国語の助動詞(能願動詞)の使い方を比較してみた」に記載していますので、是非見てみてください。
【時制】英語は時制によって動詞が変化するが、中国語は変化しない
英語の場合、過去形は「動詞+ed」、未来形は「will+動詞」または「be going to + 動詞」など、時制によって文を変化させる必要があります。
中国語は、英語と違い、時制による動詞の変化はありません。
過去
日本語:私は去年、上海に行った。
英語 :I went to shanghai last year.
中国語:我去年去上海。
現在
日本語:私は上海に行く。
英語 :I go to shanghai last year.
中国語:我去上海。
未来
日本語:私は来年、上海に行く。
英語 :I will go to shanghai next year.
中国語:我明年去上海。
中国語の過去形は、「了」を使うと勘違いしている人が多いようです。
「了」を使って現在や未来の事象を表現することもあります。
中国語の「了」の使い方については、別記事「【中国語】”了”は過去/現在/未来 どの場合でも使える」で詳しく書いています。
「了」の使い方をよく間違える方は是非読んでみてください。
【現在進行形】中国語で「在」を使う場合は少しだけ似ている
進行形とは動作が進行中である状態を表す表現です。
英語の場合、”be動詞 + ing形” で表現します。
中国語の進行形は、
S + (在 / 正在 / 正) + V + (呢)。
の形になります。
英語も中国語も、主語と動詞の間に進行形を表す語が来るなど、ぱっと見た感じ似ているようにもみえます。
英語 | S + | be | + V ing |
中国語 | 正 | + V + (呢)。 | |
S + | 正在 | ||
在 |
「彼は寝ているところです」という文章で見てみましょう。
S(主語) | V(述語) | ||
---|---|---|---|
日本語 | 彼は | -しているところです | 寝ている |
英語 | He | is | sleeping. |
中国語 | 他 | 正 | 睡觉(呢)。 |
他 | 正在 | 睡觉(呢)。 | |
他 | 在 | 睡觉(呢)。 | |
他 | 睡觉呢。 |
実際には、英語と中国語は、基本文型としての最低限の順序が似ているだけです。
英語と中国語の現在進行形の表現方法には多くの違いがあります。
詳しくは、「中国語の進行形は、”在”を使う方法だけではない!」に書いています。
【3人称単数】中国語には主語による動詞の変化はない
英語では3人称単数現在の場合、動詞に「s」をつけるルールがあります。
英語以外のヨーロッパ系言語(フランス語やドイツ語など)は主語によって全て動詞が変化するものも多いです。
日本語や中国語は、英語の「3人称単数現在」の「s」のような主語による動詞の変化はありません。
1人称単数現在
日本語:私は上海に行く。
英語 :I go to shanghai.
中国語:我去上海。
3人称単数現在
日本語:彼は上海に行く。
英語 :He goes to shanghai.
中国語:他去上海。
【疑問文】中国語は英語のように語順は変わらない
英語の疑問文は、動詞が主語の前に持ってくる必要があります。
肯定文だと「S(主語)+V(述語)」ですが、疑問文だと「V(述語)+S(主語)」の順になります。
肯定文:
あなたは日本人です。
You are Japanese.
疑問文:
あなたは日本人ですか?
Are you Japanese?
中国語で疑問文を作る場合は、英語のような語順の変化はありません。
中国語の単純な文の疑問文の作成パターンは2通りありますが、どちらも語順は「S+V」で変わりません。
肯定文:
あなたは日本人です。
你是日本人。
疑問文:
あなたは日本人ですか?
你是日本人吗?
你是不是日本人?
中国語の疑問文の作成パターンについては、「中国語の疑問文の作り方とポイント」で解説しています。
英語との違いについても言及していますので参考にしてみてください。
【疑問詞】5W1Hの考え方自体は英語にも中国語にもある
英語と同様に中国語にも5W1Hの考え方はあります。
ただし、5W1Hのような疑問詞を使った疑問文の語順も、単純な文の疑問文のパターンと同様です。
英語は、肯定文は「S(主語)+V(述語)」の語順だが、疑問文は、「V(述語)+S(主語)」の順序に変わります。
中国語は、肯定文も疑問文も「S(主語)+V(述語)」の語順は変わりません。
中国語の疑問詞は、「中国語の疑問詞:5W1H + よく使う疑問詞」で詳しく解説しています。